硝子体(しょうしたい)とは眼球内の大部分を満たしている透明なゼリー状の組織で、眼球の形状を保つ役割も担っています。
この硝子体が眼球内に生じた炎症や出血の影響で透明度を落として、しばしば視力障害を引き起こす原因になることがあります。
一方、その硝子体を通して受け取った光を映像に変換する役割を担っている組織が網膜です。
この網膜も、加齢にともなって生じた硝子体の萎縮によって眼底(眼球の奥)から引き剥がされ、深刻な視力障害を引き起こすことがあります。
硝子体手術は、こうして硝子体や網膜に発生した障害を除去するために行われる治療法です。
網膜・硝子体日帰り手術
硝子体や網膜には硝子体手術を要するさまざまな障害が発生し、中には放置すれば失明に至ることもある重篤な病気も存在します。
そうした障害に対して、手術では白目の部分に3ヶ所の小さな穴を開けて、そこから挿入した専用器具を使用しながら必要な硝子体を取り除いた上で、網膜などにそれぞれの障害に応じた処置を施します。
当グループでは、この硝子体手術を日帰りにて行っております(手術は本院で実施)。その日のうちに帰宅が可能な日帰り手術は、拘束時間を最小限に抑え、社会復帰を早期に可能とするメリットを持っています。
硝子体手術にかかる一般的な費用は保険診療適用で3割負担の場合、約150,000円となります。
ただし70歳以上の方の場合、3割負担で56,700円まで、1割負担で14,000円までという上限額が設けられているので、ひと月でそれ以上の自己負担が発生することはありません
麻酔・手術時間
麻酔
白内障手術などに比べて大がかりで時間もかかる硝子体手術においては、通常の点眼麻酔に加えてテノン嚢下麻酔と球後麻酔呼ばれる局所麻酔が用いられます。
これにより比較的長い時間を要しても痛みを感じることはほとんどなく、さらに会話も可能なままに、安心して手術を受けることができます。
所要時間
平均的な所要時間は30分~1時間程度ですが、網膜に発生した深刻な障害に対する処置が必要なケースなどにおいては2時間を超えることもままあります。それゆえに、硝子体手術は眼科の領域において最も難しい手術の一つとされています。
当院ではこうした容易ならざる手術に対しても、最新の医療機器を積極的に導入しながら、確かな技術と豊富な経験を兼ね備えた専門医が担当とすることによって、良好な予後の提供に努めております。
硝子体手術を要する病気
糖尿病網膜症
固まりやすい高血糖の血液によって、網膜上の血流が悪化することで起きる糖尿病の合併症です。
自覚症状がほとんどないままに進行し、やがて末期に至ると悪化した血流を補うために新生血管と呼ばれる血管が発生して、硝子体出血や網膜剥離といった重篤な病気を引き起こします。
網膜静脈閉塞症
網膜内の静脈が詰まって血流が悪化することで起きる病気です。
動脈硬化からの圧迫を受けて作られた血栓で静脈が詰まり、行き場を失った血液やその成分があふれ出て、網膜上に浮腫(むくみ)を引き起こします。
それにより視力低下やものが歪んで見える変視症などの障害が発生します。
主な原因として慢性腎臓病や、高血圧が考えられており、加齢とともに発症しやすくなる傾向があることも判明していて発症リスクが高まる40歳以上の日本人の発症確率は50人に1人の割合とされています。
硝子体出血
眼球内の血管から生じた出血が硝子体内に入り込んで溜まる病気です。
溜まった出血によって硝子体の透明度が落ちることで光の通過が阻害され、視力障害が発生します。
網膜剥離
網膜が眼底から剥がれて深刻な視力障害を引き起こす病気で、放置すれば失明に至ることもあります。
硝子体の萎縮などによって引っ張られた網膜に裂け目や孔が生じます。
そこから硝子体の水分が裏側へと入り込んで、網膜を眼球の内壁から浮き上がらせることで発症します。
黄斑円孔
網膜の中心には人の視力を司る黄斑と呼ばれる部分があります。
この黄斑の中心にある窪みが硝子体の萎縮とともに引っ張られて浮き上がり、そこに円形の孔が開くことで視力低下や変視症などの障害が発生する病気です。
黄斑前膜(黄斑上膜)
硝子体が萎縮する際にその一部が網膜に貼りついたまま取り残され、やがて半透明の膜を形成することがあります。
その膜が黄斑の前方を遮ることで、視力低下や変視症といった障害が発生する病気です。
黄斑変性症
網膜の下に層を成す脈絡膜に新生血管が発生し、そこからの出血や血液成分の滲出が網膜にまでおよんで浮腫を引き起こします。
それにより黄斑の働きが阻害されて、視力低下や変視症などの障害が発生する病気です。
原因の多くは加齢ですが、年齢にかかわらず強度近視などを原因に発症することもあります。